今回は、「大気中の二酸化炭素濃度」で紹介した、植物や植物プランクトン、藻類などの光合成色素をもつ生物による二酸化炭素の吸収についてご紹介します。
光合成による二酸化炭素の吸収と酸素の放出については、中学校の理科の授業でも学ぶと思いますが、林野庁のHPにわかりやすい図がありましたのでご紹介します。
樹木の葉を例にとると、 葉緑体の光合成色素により大気中の二酸化炭素と根から摂取した水とから、炭水化物を合成し酸素を放出してくれます(二酸化炭素の固定)。光合成が行われるためには光エネルギーが必要になるため、自然界では夜間には二酸化炭素の吸収は行われません。
二酸化炭素の吸収といえば、森林など陸上の植物によるものが一番に思い浮かぶことと思いますが、海藻類もなかなかの吸収力を持っています。
北海道は昆布の漁獲量全国1位で、2019年の全国シェアは約96%にもなります。北海道には産地により、真昆布、利尻昆布、日高昆布などの種類がありますが、その漁獲量は年々減少しています。天然昆布の減少を補うため、養殖事業も盛んにおこなわれています。
養殖の一つとして、晩夏に種昆布より遊走子を採り調整海水にて種苗に育て秋から海で育てた促成昆布というものがあります。促成昆布の成長は、平均で1日に2cm、6カ月で4mにも成長するものもあります。
下の図は、二酸化炭素の吸収力を比較したものですが、促成昆布は陸上植物の2倍以上の能力をもち、その成長力から即効性に期待できるといえます。
二酸化炭素吸収力の比較(炭素・㎡/年)
昆布巻き、おでん、出汁など食卓を彩り、二酸化炭素の吸収にも優れ一石二鳥の昆布ですが、先述のとおり漁獲量は年々減少しているのが現状です。
北水試だより 95(2017) 「海が変わってきた?」~コンブ漁協と海洋環境の変化~
昆布は寒流系の褐藻類で、真昆布の生息限界水温は23℃といわれています。このため、日本における生息域は宮城県以北の太平洋岸と北海道全域の海に分布していました。北海道の海は昆布にとって快適な環境でしたが、気温の上昇と同様に海水温も上昇傾向にあり、住みずらい環境になってきているのだと思います。